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脳をいつも若く保つために

氏名 河村 弘庸【脳神経外科】
経歴 元東京女子医科大学 脳神経外科教授
淑徳大学非常勤講師


ドクターコラムで前回は、男の脳と女の脳の違いについてお話ししましたが、今回は皆さんが日ごろから関心を持たれていると思われる話題を選んでみました。ボケないでいつまでも元気にいたいのは、誰しも考えるところです。

ご存知のように、脳はいとも簡単に、高次機能を遂行し、豊かな感情表現を醸しだします。
これらは、総て脳の神経細胞の働きによるものです。従って脳の神経細胞の特性からお話を始めたいと思います。

(図1)

私たちの身体は約60兆個の細胞から形成されていると言われていますが、爪や髪の毛をみると、伸びたり、生え替わります。骨折しても新しい骨が出来て治ります。即ち、組織を再生させる力があるからです。
しかし、図1を見てください。脳の神経細胞は140億しかないのに、毎日10万個も死滅し続け、再生能力はありません(ただし最近の脳科学では一部の神経細胞に再生能力があることが分かりました)100歳では20%も減少して仕舞います。(図2)

(図2)

加齢とともに神経細胞が減少し続けるのでは、大変一大事と思われますが、心配は無用です。
脳は環境の変化によく順応し、神経細胞は減少しても、神経細胞の結び付き(神経回路の形成、再生)が変化して新たな働きを生み出します。訓練や経験によって新たに神経回路の形成が促進されるのです。

(図3)

少し難しい表現になりますが、脳科学では、「終末開放性」と言って何歳になっても神経細胞のネットワークは再生され終わりがありません(図3)。
表題に「脳の老化」としましたが、皆さんを脅して適切な表現ではありませんでした。
脳の特性をご理解いただいたところで、「脳をいつまでも若く保つための」本題の前に、やはり認知症の正しい理解が必要と思いますので、少しお話ししましょう。一般的には、物忘れ、思い違いがあると認知症の始まりかと思われていますがそうではありません。認知症とはどんな事か?説明したいと思います(図4)。

(図4)

昔の記載では、「認知症」を「痴呆」と表記していましたが、今日では「認知症」に統一されました。これでお分りと思いますが、ヒントがあれば答えられるのは、認知症ではありません。認知症では、関連した事項を示しても思い出せないのです。
もう少し認知症の主な症状を整理してみると、記憶障害、見当識障害、判断力の低下が挙げられます(図5)。

(図5)

即ち、認知症は、脳の部分的な障害でなく、大脳の広い範囲の障害によるものなのです。さて、認知症と言ってもひとつではなく種類があります。図6を見てください。アルツハイマー型と非アルツハイマー型に分けられます。

(図6)

少し難しくなりますが、脳が障害される部位が違います。アルツハイマー型と脳血管性との違いを図7に示します。

(図7)

アルツハイマー型の障害部位は側頭葉内側から頭頂部にかけてですが、脳血管性は主に前頭葉の障害が目立ちます。
第一回目は、脳の神経細胞の特性と認知症についてお話ししました。次回は、「脳をいつも若く保つために」どのように脳を鍛えるかを考えてみます。

パーキンソン病では何故家では旨く歩けないのだろう

氏名 水野 美邦【神経内科】
経歴 北里大学医学部神経再生医療学特任教授
順天堂大学名誉教授

パーキンソン病の患者さんは、発症から5~10年たつと、外では上手に歩けるのに家に帰るとすり足で歩く方が多くなってきます。何故でしょう? 

踵からついて歩いていれば歩く時殆ど音がでないのに、すり足で歩くとシュッ、シュッ、シュッと音がでます。配偶者の方はこれに気づいていらっしゃると思います。ヒトの正常な歩行は踵から地面につき、つま先は最後に着地するものです。
普通の人はこれを無意識でやっています。ところがパーキンソン病になるとこれを無意識でやることが難しくなります。外で歩くときはある程度の緊張があります。人の目もあるし、ころんではいけないとの気持ちもあります。こうした緊張感が歩き方をよくしてパーキンソン病の方でも外では比較的上手に歩けるのだと思います。

ところが家に帰ると、その緊張感がいっぺんにぬけ、もう誰の目もきにすることはないという気持ちが無意識の中に働くのではないでしょうか?それで歩き方はすり足歩行になってしまいます。すり足歩行で歩くと絨毯の縁などにも引っかかって転ぶ事があります。パーキンソン病の患者さんは家の中で転ぶことが、外で転ぶより圧倒的に多いのです。打ち所が悪いと大腿骨頭の骨折などをおこして寝た切りになることもあります。従って、家でまずころばないようにしようとの固い決意が大切です。それには歩く時踵からつけてつま先は最後に床につけるという歩き方をもう一度練習して、歩く時はいつもこのように歩く事が大切です。ものを考えながら歩くことや、両手にものを持って歩くことは控えましょう。
これらのことは足に神経を集中することの妨げになります。つまり歩いているときはいつも足に神経をむけ、踵、踵と頭のなかでいいながら歩くことが大切です。どうしても踵からあるけない場合は、腿をあげて歩く練習をしましょう。この時腕を軽く振り、顎を軽く上げて進む方向をみながら歩くことが大切です。パーキンソン病では寝た切りになることはまずありません。骨折をしないように歩きましょう。

唯一男性脳の優れているのは?

氏名 河村 弘庸【脳神経外科】
経歴 元東京女子医科大学 脳神経外科教授
淑徳大学非常勤講師

 

前回まで女性脳が如何に、男性脳より優れているかをお話してきましたが、今回は男性の名誉のために、男性脳が女性脳より唯一勝る事をお示ししましょう。
これも前にお話ししましたが、人間の進化の過程に関係します。

男性は、家族を守るために、外敵の排除や食料の確保をしてきました。そのため、現在でも男性脳にはこのような能力が維持されているのです。即ち、「空間把握能力」が断然女性より優れています。
アフリカのマサイ族の狩を見てみると、狩のためには、女性のようなおしゃべりは不要で、狩を一緒にする仲間と目配せで合図を交わし、遠くに動く獲物を追い詰めます。女性より遠くの動く物に対する反応が優れています。
それでは、実際に空間把握時の機能的MRI画像を見てみましょう。男性脳と女性脳とでは、その働きが明らかに違います。
男性脳では、空間認識の際、左大脳半球、前頭葉、頭頂葉、後頭葉と広い範囲、また右大脳半球でも前頭―頭頂葉が活動しています。
一方、女性脳では、大脳半球正中部が少し働いているだけです。

男性脳と女性脳の空間能力の違いの例をお示ししましょう。
知らない場所に、車で行くのは今では車用専用の「ナビ」があります。「ナビ」では進行方向をいつも上方に表示されます。何の心配もなく、その「ナビ」の指示に従えばどこにでも間違いなく到達できます。沿線の道路状況なども考慮して目的地への到達時間も表示してくれます。
しかし、「ナビ」の無かった時代には「道路地図」を片手に運転しなければなりませんでした。
地図は上が北、下が南、右が東、左が西を指します。車が真北に進行して入り時は、地図の通りで問題がありませんが、そのほかの方向に進んでいるときは、地図を進行方向に動かさなければなりません。
しかし、男性脳では「空間認識能力」に優れていますので、地図を進行方向に回転しなくても、道路地図を見て、今いる自分の位置を把握できます。女性脳では、これが非常に苦手です。そこで、女性へのお店の場所の案内では、「大手町3丁目を左に曲がり、約300メートルの左側です」では駄目で、「新大手町ビルを右に見て、00の看板のすぐ近くで、大きな黄色の看板がありますので、そこがご案内のお店です」としなければなりません。
最も、今はスマホ等の道案内がありますので、何も考えずに目的地に連れて行ってくれます。店の案内文も、男性用、女性用に分ける必要がなくなりました。

睡眠とホルモン

氏名 松岡 健【呼吸器内科】
経歴 元東京医科大学内科学第5講座主任教授
元東京医科大学茨城医療センター長

 

睡眠無呼吸症候群{SAS}の男女比は9倍男性が多く、特に中高年、いわゆる働き盛りの男性に多いのですが、この年代はまさに生活習慣病やメタボリックシンドロームの適齢期であり、SASがこれらに一役も二役も係わっていることがわかってきたのです。


睡眠と男性ホルモンは関係が深く、男性ホルモンが低下すると睡眠障害になり、更には朝の活気がなくなります。我々の睡眠はレム睡眠とノンレム睡眠がありますが、レム睡眠は浅い眠りで身体は深く眠っているのに脳が活発に動いている状態であり、急速眼球運動を伴う睡眠のことです。よく夢を見る時であり、一晩の睡眠で4-5回のレム睡眠が観測されます。そのレム睡眠は身体の基礎機能を調整している副交換神経が活性化して腸が動くのですが、男性自身も腸の親戚の内臓の一部として同様に反応し、無自覚の「夜間睡眠時エレクト」が起こります。これがいわゆる「朝のエレクト」で、性的に興奮をしたときの自覚的エレクトとは別のメカニズムであり、朝のエレクトは「男の生理」といわれ、健康のバロメーターでもあります。また性欲の低下やインポテンツもSASと関連していることがあるとされています。
 どうも最近、睡眠障害があり朝のエレクトがなくなってきた男性は男性ホルモンが低下していて、いびきをかくようでしたらSASかもしれません。ぜひ検査をしましょう。


『みちのく遅春』 中澤 満
(所蔵:総合東京病院)

女性の場合は男性より発症が少ないと言われていますが、それは女性ホルモンの一種であるプロゲステロンに呼吸中枢を刺激する働きがあるからです。しかし閉経後の女性はプロゲステロンの分泌が少なくなり無呼吸が起きやすくなるので注意が必要です。またSASの症状に倦怠感、頭痛、不眠、寝汗、などがありますが、更年期障害による症状に似ていることから、SASを見逃しやすく重篤化してしまうことがあります。
 小児のSASは近年増加し、特に肥満児が増加しているからと言われています。さて成長ホルモンは名前のごとく骨の発達を促進し成長に大きな役割を果たしています。「眠る子は良く育つ」と言われますが、成長ホルモンは夜間睡眠中に パルス状に多く分泌され、睡眠中の身体の修復や脂肪燃焼の促進効果が知られています。
 いずれにしても男女小児を問わずホルモン分泌異常の疑いがある場合はSASを疑い、簡易検査を行いましょう。
 ちなみにSAS と関連した物語でフランス人の劇作家ジロードの戯曲「オンディ-ヌ」があります。水の精オンディーヌがSAS にかかっている若者ハンスを愛するも、睡眠中に死んでしまうという劇です。日本では劇団「四季」にて長く上映されていました。その他イギリスの作家ディケンズの小説に出てくる太った少年は昼間から終始ウトウトして居眠りしているSASの患者さんです。それに由来した「ピックウイツク症候群」という名の病気が内外昨今問わず有名で、突然死を伴う怖い病気です。

文献1}諏訪邦夫 酸素は体になぜ大切か  1990年4月20日 講談社
文献2}熊本悦明 さあ立ち上がれ男たちよ 2016年3月15日 幻冬舎

たかが{いびき}されど{いびき}2

氏名 松岡 健【呼吸器内科】
経歴

元東京医科大学内科学第5講座主任教授
元東京医科大学茨城医療センター長

 

いびきの問題が取り上げられるようになったのは40年前のことで1976年米国ギルミノー博士が「睡眠時無呼吸症候群」「SAS」という病気を提案しました。SASは「眠ると息が止まる」という状態です。時間は長くありませんが10秒から20秒くらい、長くても1分以内です。またまた「睡眠無呼吸」とはいっても完全に無呼吸ではなく極端に呼吸の弱ったものを含まれます。
SASには2つのタイプがあります。
1つ目は呼吸努力はしているが気道が塞がる「閉塞型」、2つ目は本当に呼吸が停止する「中枢型」であります。閉塞型「Obusuturactive」の頭文字をとってOSASとも呼ばれます。SASの大半はOSASですが中高年の男性、特に肥満している人に多く見られます。呼吸の努力はしているのに。上気道『鼻から肺までの空気の通り道のうち、のどから上の部分』がふさがっているために無呼吸になることが原因です。SASと診断されるのはどんな場合でしょうか?

【睡眠時無呼吸症候群の定義】
Cに加えて、AまたはBがあること。
A、日中の傾眠(居眠りしやすいこと)がある。
B、下記のうち2つ以上あてはまる項目がある。
 ・睡眠中に息苦しくなり覚醒する
 ・睡眠中に頻回に覚醒する
 ・起床時に眠れた感じがしない
 ・昼間、からだがだるい
 ・集中力が低下している
C、睡眠検査にて、1時間に5回以上の無呼吸がある。
※AとBの自覚症状は、ほかの理由で説明できないことが条件です。
※Cは無呼吸のほかに、低呼吸やそれらにともなう呼吸努力関連覚醒も含みます。
*低呼吸は、吸気が確認されないわけではないが、1回の換気量が50%以下。

【アメリカ睡眠医学会による閉塞型睡眠時無呼吸症候群の診断基準】

上記のごとく診断には『無呼吸』だけでは不十分で日中の傾眠『居眠りしやすい』事などがなければSASとは診断されないということです。その他に無呼吸がなくても激しいいびきのために同様の症状を起こすことがあります。いびきが激しいことは狭い上気道での気流を確保するために大変な呼吸努力をしています。
この呼吸努力のため寝ていても何度も脳が起こされ、無呼吸を繰り返す人と同じように睡眠が分断され良質な睡眠が得られず、昼間に眠くなるのです。さてSASに該当する人はどのくらいいるのかは、正確には把握されていませんが、現在の医学会ではSAS患者は約200万人と言われています。しかし実際に治療を受けている人はわずか十数万人に過ぎません。
その理由は、患者さんが①いびきに気付いていない②病気だと思ってない③治らないと思っている④治療機関が少ない等です。男女比は9対1で圧倒的に男性に多いです。特に中高年に多く、まさしく生活習慣病やメタボリック症候群の適齢期です。
 近年SASは新幹線の居眠り事故で一躍世間の注目を集めた病気です。昼間の眠気の原因は睡眠中に繰り返される脳波上の覚醒反応です。無呼吸「気流が止まる」になると体内の酸素不足が進みそのままですと低酸素で呼吸をしないまま永遠の眠りについてしまいます。電車の中で日本人はよく居眠りしている人が多いですが昔住んでいたパリはほとんど居ません。日本は治安がよいですからスリは居ませんので安心して居眠りするかもしれませんが、SASの可能性がありますよ。

たかが{いびき}されど{いびき}1

氏名 松岡 健【呼吸器内科】
経歴

元東京医科大学内科学第5講座主任教授
元東京医科大学茨城医療センター長

 

皆様昨夜よく眠れましたか?よく眠れた方は今日の生活は活力に満ちたものになりますし集中力も生まれます。ちょっとしたことでいらいらせずにすごすことができます。このような{安眠}が得られることはとても幸せです。しかし眠りたくて布団に入っても眠れないという方は{不眠症}です。不眠症とは違って眠っている間に呼吸が止まるのは{睡眠時無呼吸症候群}SAS があります。SAS の患者さんはほとんどの方がうるさい{いびき}をかいてますが。いびき。SASは日本人の死因には出てこなく1位は{がん}ですが心疾患。脳血管疾患が2位。3位です。いびきSAS はなぜ問題にされるのでしょうか?なぜかといえば心筋梗塞、脳梗塞、の原因の1部になるからです。

 図に示したように自覚症状がないのに高血圧症がなぜ問題になつているのか、脂質異常がなぜ問題になるか?それはいびき「SAS」を放置すると心筋梗塞、脳梗塞の原因の1部になるからです。糖尿病、喫煙も同じです。SASも同じなのです・すべて血管が血液と接している内皮細胞の機能障害をおこし、最終的な結果として動脈硬化性血栓症である心筋梗塞、脳梗塞にいたるのである。
 いびき人口は中高年男性で約6割 2000万人といわれてますが、毎日つまり習慣的にいびきをかいている場合は健康的とはいえません。そもそも睡眠中は体の酸素要求が減りいびきをかかない人でも呼吸が弱くなり換気量が低下します。従って体に取り込まれる酸素の量が少なくなります。いびきをかく人は睡眠中の呼吸に問題があるゆえより酸素不足に陥っている可能性がある。いびきこそ「不健康の証」である。
 このように睡眠中に正常な呼吸ができないために必要な酸素が取り込めないのを総称して「睡眠呼吸障害」 そのなかでも主には「睡眠時無呼吸症候群」「SAS」なのです。

小児・思春期頭痛外来

氏名 藤田 光江【小児科】
経歴 東京クリニック小児・思春期頭痛外来
一般財団法人筑波学園病院小児科(精神・神経外来)

 

 頭痛は、子どもも保護者も何か病気が隠れていないか心配になる症状であるが、原因のある二次性頭痛は3〜4%である。原因疾患のない一次性頭痛で、生活支障度が高いのは子どもも片頭痛である。片頭痛は小児でも強い頭痛で、前兆や嘔吐を伴うこともあるが、急性期治療及び予防治療が多くは有効である。

 一方、頭痛が強いため学校欠席の多いいわゆる慢性連日性頭痛は、患児と保護者が強く治療の効果を期待する頭痛である。片頭痛が基礎にあることも多いが、心理社会的要因が関与する慢性緊張型頭痛がメインで、薬物治療に抵抗し難治である。小児・思春期頭痛外来を受診する子どもの頭痛の半分は、このような難治な頭痛であるが、頭痛ダイアリーを記載しながら、子ども自身がストレスに気付き、対処法を模索しながら成長していく過程で必ず良くなる頭痛でもある。以下に小児の頭痛の起こり方と対処法を示した。

※参考Webサイト
日本頭痛協会:養護教諭と教師向け資料:http://www.zutsuu-kyoukai.jp

男と女の脳のちがい(そのII)

氏名 河村 弘庸【脳神経外科】
経歴 元東京女子医科大学 脳神経外科教授
淑徳大学非常勤講師

 

 今回は、女性と男性とで感情表現の違い、また、男性は化粧をしないが、女性は化粧なしでは人前に絶対に出もでません。これも決定的に男性と女性の脳の働きの違いですので、何故なのかお話します。

(図1)

 図1は機能的MRI(核磁気共鳴診断装置)を用いて女性が感情表現している時と男性との違いを示しています。一目瞭然で女性脳では、大脳半球の前後左右と広い場所を同時に使用しているのが分かります。一方、男性脳では左大脳半球の前後2カ所しか働いていません。

(図2)

 前回お話しましたが、女性は子育てが基本的に中心ですので、周囲とのコミュニケーションを大切にします。従って、図2に提示したように、共感する女性脳の特性があります。お喋りの中でいろいろと考え、感情表現も周囲の状況に応じて臨機応変に変えることができるものです。そこで沈思黙考は難しいのです。
 男性脳では、物事を抽象的に把握しシステム化するのに長けていますが、孤独になり勝ちで女性より早く呆ける傾向が明らかです。
 図2に示したように、女性は人間関係を中心としたコミュニケーションを大切にしますが、あくまでも、自分の存在を密かに構築します。従って、自分が必ずしもそうだとは思わなくても、その場の雰囲気に合わせ、「そうね!」と言えるのです。
 いつも断定的な表現は避け、婉曲的表現に終始する傾向が強いので、女性は化粧なしでは、外出できないように「言葉」にも化粧をするのです。このような女性特有の言語表現能力には、男性は全く、追従できません。
 少し横道に逸れますが、茂木健太郎氏著書「化粧する脳」を参考に女性の化粧について考えてみたいと思います。

(図3)

化粧は社会へのパスポートであり、自己構築の基本です.常に他人からの視線を気にしなければ居られないので、自分の脳も化粧を施すと言われています「図3」。

(図4)

少し難しくなりますが、更に面白いことに、化粧している自分の顔と素顔では、あたかも他人と自分を見比べているように、脳が働く場所が同じなのです。右側頭葉後部の「紡錘回」と言う場所が働くのです「図4」。 少し難しくなりましたが、女性脳の高等で複雑な「感情機構」を理解して頂けたでしょうか?

多発性硬化症治療薬の著しい進歩

 
氏名 藤原一男
経歴 福島県立医科大学多発性硬化症治療学講座、教授
一般財団法人脳神経疾患研究所 多発性硬化症
視神経脊髄炎センター、センター長

 

 多発性硬化症(multiple sclerosis, MS)は脳脊髄に炎症による脱髄病変(脱髄とは神経線維を覆うミエリンが破壊されること、ミエリンは電線を覆うビニールのようなもので神経の情報伝達を速くするのに役立っています)が多発する疾患です。若年成人に起こりやすく我が国では1万数千人が罹患しており、年々増えています。
MSの症状は視覚障害、ふらつき、脱力、しびれ、記憶力の低下、排尿や排便の障害など様々ですが、無治療では再発を繰り返したり、しだいに病状が進行して不自由が増していく慢性の神経難病です。

 MSの再発を減らしたり、病状の進行を遅らせる薬を疾患修飾薬といいます。再発を繰り返すタイプのMS(再発寛解型MS)では、再発や脳病変を減少させる疾患修飾薬として、インターフェロンベーター(自己注射で皮下注と筋注の2剤がある)、フィンゴリモド(内服薬)、ナタリズマブ(点滴薬)が使用可能です。さらに最近、コパキソン(自己注射)も承認されまもなく臨床現場で使えるようになります。
一般に、インターフェロンベーターとコパキソンは第一選択薬(まずはじめに投与する薬)、フィンゴリモドとナタリズマブは第二選択薬(第一選択薬が効果不十分あるいは副作用で使えない場合、あるいは再発や脳病変が多い疾患活動性の高いMSでは最初から使う)に分類されています。
また、第一選択薬であるBG-12(内服薬)や歩行障害を改善する4-アミノピリジン(内服薬)の継続投与試験が進行中です。

 欧米ではさらに多くの薬剤がMSに承認されていますが、最近(H27年10月)スペインのバルセロナ市で開催され約9000人が参加した第31回ヨーロッパMS学会(ECTRIMS)では、これまで有効な薬のなかった慢性進行型MSにオクレリズマブというBリンパ球のCD20という分子に対するモノクローナル抗体製剤が病気の進行抑制に有効との治験の成績が報告され、またビオチンという物質を投与すると慢性進行型MSの症状を改善するという驚くべき結果も発表されました。
さらにこの学会では、MSの再発時に壊れたミエリンの再生(再髄鞘化)を促す抗リンゴ-1(LINGO-1)抗体という薬で、視神経炎の後の視覚誘発脳波所見の改善、すなわちこの治療薬により視神経炎の治りがよりよくなったことも報告されました。無論、これらの治療薬の有効性はさらに確認していく必要がありますが、MS治療の新たな可能性として大いに期待されます。


 このようにMSの治療薬の進歩は今や日進月歩ですが、その実際の投与についてはMS専門医とよく相談して自分に合うのかどうかを判断する必要があります。当クリニックではMSのセカンドオピニョン外来を第1、第3月曜日の午後に行っております(休診のこともありますので電話でご確認ください)。お気軽に御相談ください。

男と女の脳のちがい(そのI)

氏名 河村 弘庸【脳神経外科】
経歴 元東京女子医科大学 脳神経外科教授
淑徳大学非常勤講師

これからシリーズで、「男と女の脳のちがい」についてお話し致します。 皆さんの中には、男と女の脳の働きには大分違いがあるのではと気付く人もいると思います.ここに示した図1のように、子供も大人でも趣味も衣装もこんなに違いがあります。きっと脳の働きにも違いがあるのではないでしょうか?

(図1)

(図2)

さて、「男と女の脳の働きのちがい」には1言語、2立体認知、3視覚の3つに分かられます。今回は,1言語のちがいについてお話しします。はじめに、男と女が話しをしているときに脳のどのような場所を使っているか、特殊な診断装置(機能的MRI)使って見てみましょう。

(図3)

女の脳では、話しをしているとき、大脳半球の右も左も、前も後ろも働いています.一方、男の脳では、左大脳半球の前後2カ所しか使っていません.女性が如何にお喋りかお分かり頂けると思います.女性脳ではこの左右、前後の言語センターを駆使するので、3-4人の女性が違う話題を同時に話し合っていてもお互いに理解できるのです.例えばAさんが旦那さんの仕事のこと、Bさんが子供の学校のこと、Cさんが料理の話し、Dさんがダイエットのこと、このように全く異なった話題を同時に話しても十分理解し合っているのです.男はこうした場には入れません.たとえ仲間に入ったとしても、1つの話題も理解できないと思います.まさに「井戸端会議に花が咲く」でしょうか?  また、この女性脳の特徴を活かした職業があります.同時通訳の仕事です.外国語を右脳で聞き、左脳で母国語に翻訳するのです.専門的な特殊な通訳以外は、全て女性が活躍しています.その理由がお分かり頂けたと思いますが如何でしょうか.余談になりますが、同時通訳の仕事は、脳を酷使するので脳が疲労してしまので、15分交代です.脳のエネルギー源はブドウ糖です、それで休憩にはチョコレートを食べるそうです。  それでは、どうしてこのような「男と女の脳の働きのちがい」が生まれたのでしょうか?人間の進化の過程にあるようです.人類がこの地球上に生存し始めたときから、男性は狩をして食料を確保し家族を守るのが仕事で、一方女性は洞窟で他のいくつもの家族と共同で生活し子供を育てたと言われています「図4」。

(図4)

狩の時に会話は不要で、目配せなど合図し数人で獲物を捕ったものと思います.そのため、現在でもその遺伝子が受け継がれ、男性は無口なのです.女性は共同生活を円滑にするために、お喋りに成ったのでしょう.因みに女性は1日に2万語、男性は僅か7千語と言われています。
今回のお話はこれでお終りですが、少しでも興味を持って頂ければ幸いです。