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ヘアピンをつけたままMRを撮影したら・・・

2019.11.28

MRI検査を受ける際に、「全身に身に着けている金属を外してください」と患者様にお願いをしています。ではもし、金属を身に着けたままMR室へ入ってしまい、検査を行うとどうなってしまうのでしょうか?
 
頭にヘアピン(金属)をつけたままの写真を以下に示します。
(実験として、安全に配慮しながらスタッフがピンを頭に張り付けて撮影しました。)

図1の正常画像に比べ、図2の画像が黒く抜けてしまっていることが分かるかと思います。
もしこの部分に病変があったとしても、診断することは難しくなってしまいます。
この他にも、
・金属が熱を持ち、患者様が火傷をしてしまう可能性
・装置に金属がひっぱられたり跳ね返ったりして患者様に当たって怪我をする可能性
・装置に金属が入り込み装置が壊れて検査ができなくなってしまう可能性
などがあります。

【画像が欠損してしまう物の例】
・入れ歯
・歯科矯正
・ヘアピン
・ふりかけるタイプの白髪染め
・増毛パウダー
・ホッカイロ         などなど…

ぜひ、MR検査を受ける際は必ず全身の金属を外していただくようにお願いいたします。


【MRI室に金属を持ち込んではいけない理由】
・金属がMR装置にくっつき(または跳ね返り)、大けがをしてしまう
・金属が発熱し、火傷の原因になってしまう
・磁気カード、腕時計などは壊れてしまう可能性がある
・MR装置に金属が張り付き、装置故障の原因となる
・画像が欠損し、診断の支障となる


脳をいつも若く保つために

2017.06.26

氏名 河村 弘庸【脳神経外科】
経歴 元東京女子医科大学 脳神経外科教授
淑徳大学非常勤講師


ドクターコラムで前回は、男の脳と女の脳の違いについてお話ししましたが、今回は皆さんが日ごろから関心を持たれていると思われる話題を選んでみました。ボケないでいつまでも元気にいたいのは、誰しも考えるところです。

ご存知のように、脳はいとも簡単に、高次機能を遂行し、豊かな感情表現を醸しだします。
これらは、総て脳の神経細胞の働きによるものです。従って脳の神経細胞の特性からお話を始めたいと思います。

(図1)

私たちの身体は約60兆個の細胞から形成されていると言われていますが、爪や髪の毛をみると、伸びたり、生え替わります。骨折しても新しい骨が出来て治ります。即ち、組織を再生させる力があるからです。
しかし、図1を見てください。脳の神経細胞は140億しかないのに、毎日10万個も死滅し続け、再生能力はありません(ただし最近の脳科学では一部の神経細胞に再生能力があることが分かりました)100歳では20%も減少して仕舞います。(図2)

(図2)

加齢とともに神経細胞が減少し続けるのでは、大変一大事と思われますが、心配は無用です。
脳は環境の変化によく順応し、神経細胞は減少しても、神経細胞の結び付き(神経回路の形成、再生)が変化して新たな働きを生み出します。訓練や経験によって新たに神経回路の形成が促進されるのです。

(図3)

少し難しい表現になりますが、脳科学では、「終末開放性」と言って何歳になっても神経細胞のネットワークは再生され終わりがありません(図3)。
表題に「脳の老化」としましたが、皆さんを脅して適切な表現ではありませんでした。
脳の特性をご理解いただいたところで、「脳をいつまでも若く保つための」本題の前に、やはり認知症の正しい理解が必要と思いますので、少しお話ししましょう。一般的には、物忘れ、思い違いがあると認知症の始まりかと思われていますがそうではありません。認知症とはどんな事か?説明したいと思います(図4)。

(図4)

昔の記載では、「認知症」を「痴呆」と表記していましたが、今日では「認知症」に統一されました。これでお分りと思いますが、ヒントがあれば答えられるのは、認知症ではありません。認知症では、関連した事項を示しても思い出せないのです。
もう少し認知症の主な症状を整理してみると、記憶障害、見当識障害、判断力の低下が挙げられます(図5)。

(図5)

即ち、認知症は、脳の部分的な障害でなく、大脳の広い範囲の障害によるものなのです。さて、認知症と言ってもひとつではなく種類があります。図6を見てください。アルツハイマー型と非アルツハイマー型に分けられます。

(図6)

少し難しくなりますが、脳が障害される部位が違います。アルツハイマー型と脳血管性との違いを図7に示します。

(図7)

アルツハイマー型の障害部位は側頭葉内側から頭頂部にかけてですが、脳血管性は主に前頭葉の障害が目立ちます。
第一回目は、脳の神経細胞の特性と認知症についてお話ししました。次回は、「脳をいつも若く保つために」どのように脳を鍛えるかを考えてみます。


パーキンソン病では何故家では旨く歩けないのだろう

2017.04.10

氏名 水野 美邦【神経内科】
経歴 北里大学医学部神経再生医療学特任教授
順天堂大学名誉教授

パーキンソン病の患者さんは、発症から5~10年たつと、外では上手に歩けるのに家に帰るとすり足で歩く方が多くなってきます。何故でしょう? 

踵からついて歩いていれば歩く時殆ど音がでないのに、すり足で歩くとシュッ、シュッ、シュッと音がでます。配偶者の方はこれに気づいていらっしゃると思います。ヒトの正常な歩行は踵から地面につき、つま先は最後に着地するものです。
普通の人はこれを無意識でやっています。ところがパーキンソン病になるとこれを無意識でやることが難しくなります。外で歩くときはある程度の緊張があります。人の目もあるし、ころんではいけないとの気持ちもあります。こうした緊張感が歩き方をよくしてパーキンソン病の方でも外では比較的上手に歩けるのだと思います。

ところが家に帰ると、その緊張感がいっぺんにぬけ、もう誰の目もきにすることはないという気持ちが無意識の中に働くのではないでしょうか?それで歩き方はすり足歩行になってしまいます。すり足歩行で歩くと絨毯の縁などにも引っかかって転ぶ事があります。パーキンソン病の患者さんは家の中で転ぶことが、外で転ぶより圧倒的に多いのです。打ち所が悪いと大腿骨頭の骨折などをおこして寝た切りになることもあります。従って、家でまずころばないようにしようとの固い決意が大切です。それには歩く時踵からつけてつま先は最後に床につけるという歩き方をもう一度練習して、歩く時はいつもこのように歩く事が大切です。ものを考えながら歩くことや、両手にものを持って歩くことは控えましょう。
これらのことは足に神経を集中することの妨げになります。つまり歩いているときはいつも足に神経をむけ、踵、踵と頭のなかでいいながら歩くことが大切です。どうしても踵からあるけない場合は、腿をあげて歩く練習をしましょう。この時腕を軽く振り、顎を軽く上げて進む方向をみながら歩くことが大切です。パーキンソン病では寝た切りになることはまずありません。骨折をしないように歩きましょう。


唯一男性脳の優れているのは?

2017.01.25

氏名 河村 弘庸【脳神経外科】
経歴 元東京女子医科大学 脳神経外科教授
淑徳大学非常勤講師

 

前回まで女性脳が如何に、男性脳より優れているかをお話してきましたが、今回は男性の名誉のために、男性脳が女性脳より唯一勝る事をお示ししましょう。
これも前にお話ししましたが、人間の進化の過程に関係します。

男性は、家族を守るために、外敵の排除や食料の確保をしてきました。そのため、現在でも男性脳にはこのような能力が維持されているのです。即ち、「空間把握能力」が断然女性より優れています。
アフリカのマサイ族の狩を見てみると、狩のためには、女性のようなおしゃべりは不要で、狩を一緒にする仲間と目配せで合図を交わし、遠くに動く獲物を追い詰めます。女性より遠くの動く物に対する反応が優れています。
それでは、実際に空間把握時の機能的MRI画像を見てみましょう。男性脳と女性脳とでは、その働きが明らかに違います。
男性脳では、空間認識の際、左大脳半球、前頭葉、頭頂葉、後頭葉と広い範囲、また右大脳半球でも前頭―頭頂葉が活動しています。
一方、女性脳では、大脳半球正中部が少し働いているだけです。

男性脳と女性脳の空間能力の違いの例をお示ししましょう。
知らない場所に、車で行くのは今では車用専用の「ナビ」があります。「ナビ」では進行方向をいつも上方に表示されます。何の心配もなく、その「ナビ」の指示に従えばどこにでも間違いなく到達できます。沿線の道路状況なども考慮して目的地への到達時間も表示してくれます。
しかし、「ナビ」の無かった時代には「道路地図」を片手に運転しなければなりませんでした。
地図は上が北、下が南、右が東、左が西を指します。車が真北に進行して入り時は、地図の通りで問題がありませんが、そのほかの方向に進んでいるときは、地図を進行方向に動かさなければなりません。
しかし、男性脳では「空間認識能力」に優れていますので、地図を進行方向に回転しなくても、道路地図を見て、今いる自分の位置を把握できます。女性脳では、これが非常に苦手です。そこで、女性へのお店の場所の案内では、「大手町3丁目を左に曲がり、約300メートルの左側です」では駄目で、「新大手町ビルを右に見て、00の看板のすぐ近くで、大きな黄色の看板がありますので、そこがご案内のお店です」としなければなりません。
最も、今はスマホ等の道案内がありますので、何も考えずに目的地に連れて行ってくれます。店の案内文も、男性用、女性用に分ける必要がなくなりました。


睡眠とホルモン

2016.12.21

氏名 松岡 健【呼吸器内科】
経歴 元東京医科大学内科学第5講座主任教授
元東京医科大学茨城医療センター長

 

睡眠無呼吸症候群{SAS}の男女比は9倍男性が多く、特に中高年、いわゆる働き盛りの男性に多いのですが、この年代はまさに生活習慣病やメタボリックシンドロームの適齢期であり、SASがこれらに一役も二役も係わっていることがわかってきたのです。


睡眠と男性ホルモンは関係が深く、男性ホルモンが低下すると睡眠障害になり、更には朝の活気がなくなります。我々の睡眠はレム睡眠とノンレム睡眠がありますが、レム睡眠は浅い眠りで身体は深く眠っているのに脳が活発に動いている状態であり、急速眼球運動を伴う睡眠のことです。よく夢を見る時であり、一晩の睡眠で4-5回のレム睡眠が観測されます。そのレム睡眠は身体の基礎機能を調整している副交換神経が活性化して腸が動くのですが、男性自身も腸の親戚の内臓の一部として同様に反応し、無自覚の「夜間睡眠時エレクト」が起こります。これがいわゆる「朝のエレクト」で、性的に興奮をしたときの自覚的エレクトとは別のメカニズムであり、朝のエレクトは「男の生理」といわれ、健康のバロメーターでもあります。また性欲の低下やインポテンツもSASと関連していることがあるとされています。
 どうも最近、睡眠障害があり朝のエレクトがなくなってきた男性は男性ホルモンが低下していて、いびきをかくようでしたらSASかもしれません。ぜひ検査をしましょう。


『みちのく遅春』 中澤 満
(所蔵:総合東京病院)

女性の場合は男性より発症が少ないと言われていますが、それは女性ホルモンの一種であるプロゲステロンに呼吸中枢を刺激する働きがあるからです。しかし閉経後の女性はプロゲステロンの分泌が少なくなり無呼吸が起きやすくなるので注意が必要です。またSASの症状に倦怠感、頭痛、不眠、寝汗、などがありますが、更年期障害による症状に似ていることから、SASを見逃しやすく重篤化してしまうことがあります。
 小児のSASは近年増加し、特に肥満児が増加しているからと言われています。さて成長ホルモンは名前のごとく骨の発達を促進し成長に大きな役割を果たしています。「眠る子は良く育つ」と言われますが、成長ホルモンは夜間睡眠中に パルス状に多く分泌され、睡眠中の身体の修復や脂肪燃焼の促進効果が知られています。
 いずれにしても男女小児を問わずホルモン分泌異常の疑いがある場合はSASを疑い、簡易検査を行いましょう。
 ちなみにSAS と関連した物語でフランス人の劇作家ジロードの戯曲「オンディ-ヌ」があります。水の精オンディーヌがSAS にかかっている若者ハンスを愛するも、睡眠中に死んでしまうという劇です。日本では劇団「四季」にて長く上映されていました。その他イギリスの作家ディケンズの小説に出てくる太った少年は昼間から終始ウトウトして居眠りしているSASの患者さんです。それに由来した「ピックウイツク症候群」という名の病気が内外昨今問わず有名で、突然死を伴う怖い病気です。

文献1}諏訪邦夫 酸素は体になぜ大切か  1990年4月20日 講談社
文献2}熊本悦明 さあ立ち上がれ男たちよ 2016年3月15日 幻冬舎