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冬の皮膚病―乾皮症性(皮脂欠乏性)湿疹

2015.12.21

氏名 飯島 正文【皮膚科】
経歴 昭和大学名誉教授
山梨大学医学部皮膚科 非常勤講師
日本皮膚科学会元理事長

 

 冷え込んで乾燥するこの季節に急増する皮膚病が、乾皮症性(皮脂欠乏性)湿疹です。男女を問わず、特に高齢者に多く認められますが、40~50歳代の中年の患者さんも決して稀ではありません。
 病名の通り、この湿疹は冬季皮膚が乾燥してカサカサすることから始まります。乾燥した皮膚が強い痒みを誘い、この痒い乾燥皮膚を掻くことにより湿疹病変が作られ、さらに湿疹が痒みを増強させ、また掻くことにより湿疹がさらに悪化することになります。すなわち、乾燥皮膚→痒み誘発→掻破→湿疹誘発→痒み増強→掻破→湿疹増悪、という、痒みと掻破行為の悪循環、これをitch-scratch cycleと言います、が起こって湿疹病変が重篤化し、夜も眠れないと訴えて患者さんがクリニックの外来にお見えになります。

 治療の基本は通常の湿疹治療に加え、皮膚乾燥=乾皮症対策が重要です。湿疹にはステロイド外用療法が基本で、痒みには抗アレルギー薬・抗ヒスタミン薬内服を併用します。乾皮症には各種保湿剤、ヘパリノイド含有軟膏、尿素軟膏、ワセリンなどを用います。最も大切なことは日常生活指導で、風呂は温めを原則とし、汚れを洗い流す程度のやさしい石鹸使用にとどめてください。
江戸っ子の如く熱い風呂に入り、ナイロンの健康タオルでゴシゴシ擦って洗う垢すり行為は最悪です。冬の季節が来たら直ちに保湿剤(市販薬にも良いものがたくさんあります!)を用いた乾燥皮膚対策をお始め下さい。乾皮症の程度を改善する、掻いて湿疹化することを防ぐことが予防の第一歩です。加齢に伴って誰にでも老人性乾皮症は起こり得ますが、症状の程度は人により様々です。乾皮症は温度・湿度の急激な低下で悪化しますので、初冬の今こそが乾皮症対策の大事な季節です。


ペインクリニックと顔面神経麻痺治療への想い

2015.12.02

氏名 増田 豊【ペインクリニック内科】
経歴 ペインクリニック内科 部長
昭和大学薬学部客員教授
聖マリアンナ医科大学客員教授
NPO法人 ペインクリニック普及協会 理事
麻酔指導医
ペインクリニック専門医

 

 ペインクリニックは、痛みを専門的に治療する部門である。首・肩・腕や足・腰の痛みを始め頭痛や顔面痛などあらゆる痛みに対して治療を行っている。その治療手段として、ペインクリニックで特徴的な手段が神経ブロック療法である。
 神経ブロックは、知覚神経、運動神経、自律神経の交感神経を対象に、それぞれ単独にまたは一緒にブロック(遮断)して痛みをはじめ症状や病態を改善することができる。特に交感神経に対するブロックの効果は特徴的である。支配領域の血行を改善し、発汗を抑制し、疼痛反射路を遮断して痛みや痛みの悪循環を改善する。代表的な交感神経の一つに星状神経節がある。
 少し古い話になるが、田中角栄氏が総理大臣を務めていた時期に、顔面神経麻痺になったという出来事を中年以上の読者なら覚えておられると思う。そのとき顔面神経麻痺の治療に星状神経節ブロックという神経ブロック療法が行われ、一般にはあまり知られていない治療法が首相に行われたこともあって、当時は大変話題になった。

 痛みの疾患ではない顔面神経麻痺の治療を、なぜペインクリニックが担当して星状神経節ブロックが行われたのか不審に思った人も世間には多かったであろう。
星状神経節というのは、頭部・顔面・頚部・上肢・上胸部領域を支配している交感神経であり、この神経をブロックするとこの領域の血流が増加して、障害を受けた部分の回復を速めることができる。つまり、顔面神経の障害により発症した顔面の麻痺症状を改善できるのである。
顔面神経麻痺に対しては、一般的にステロイド療法が選択されることが多いのだが、総理は糖尿病などもあり、ステロイド療法を希望されなかったのである。数ヶ月後に総理の表情はほぼ元通りに回復したことも当時の新聞記事で確認することができる。たまたま筆者は治療の手伝いをした経緯もあり、今でも忘れられない出来事として鮮明に覚えている。

 その後筆者は母校のペインクリニックを担当することになり、35年以上にわたりペインクリニックの診療に従事してきた。
母校のペインクリニックでは顔面神経麻痺の治療に対し星状神経節ブロックを積極的に応用し、予後診断に早くから電気生理学的診断機器(Electroneurography:ENoG)を導入し、その効果を評価してきた。院内の顔面神経麻痺患者の予後評価を行いつつ、星状神経節ブロックによる治療を数多く経験する機会を得た。
星状神経節ブロックに関してはいくつかの臨床研究を行ってきたが、「顔面神経麻痺の治療に対する星状神経節ブロックの効果」についての研究では、顔面神経麻痺が治癒した時点でステロイド療法と治療効果の差はなかったが、初期の麻痺回復の立ち上がりがステロイド療法より速かったという結果を得ている。
数年前から動物を用いて顔面神経麻痺の回復に影響する因子の研究なども行っており、星状神経節ブロックの有効性をさらに証明するために研究を継続している。

 神経ブロック療法は、手術が不可能な場合や、様々な事情で薬物療法が不可能な場合にも応用できる場合があり、今後の医療にとってさらに貢献できる可能性のある重要な手段であると考えている。


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